防音室ならぬ「顔だけ防音室」をDIY(自作)して、自由に歌える環境をGETする方法

                   
          

こんにちは、Voick運営チームのいっすいです。

今回は、タイトルにあるように、防音室ならぬ「顔だけ防音室」をDIYして、自宅でも自由に歌を歌える環境を手に入れる方法をお伝えします。

歌うことが大好きな我々のような人種にとって、日本の住環境というのは非常に生き辛い環境です。この狭い日本の土地に、億を超える人々が暮らしています。そりゃあ、すぐそばには人が住んでます。

そんな中、いくら騒音問題に気をつけてボイストレーニングをしているつもりでも、

「隣の部屋から奇声が聞こえる」
「ドン(壁を叩かれる音)」

そんな苦情をもらうこともあったりなかったり(本当に申し訳ない気持ちでいっぱいになりますよね)。

対策として、布団にくるまってみたり、枕に向かって叫んでみたり、防音材を貼ってみたり(とはいえ賃貸住宅だと限界も)、防音室の販売価格やレンタル料に悩んでみたり。

・・・いろいろとチャレンジしてみますが、やはり

「もっと気軽に自由に家で歌えるようにしたい!(できれば安く)

そう思ってしまいます。
そんな我々の想いを解決するのが、顔だけ防音室なんです。

本記事では、防音の理論から、実際に顔だけ防音室をDIY(自作)する手順まで紹介していきます。

顔だけ防音室とは

顔だけ防音室とは、顔の周りだけを覆う、小さな箱のことを指します。つまり、「歌の防音に特化した、ミニマムな防音室」です。

顔だけ防音室のメリットは以下の通り。

メリット

  • 歌声が外に漏れにくい
  • かなりデッド(反響の少ない)な録音環境を実現できる
  • 防音室にくらべ圧倒的省スペース
  • 賃貸住宅でも使用可能(ただし自己責任で)
  • 簡単に自作(DIY)できる
  • 防音室に比べ、かなり安く制作できる

魅力的ですよね。実際の効果のほどを紹介します。
※計測はかなり雑なものなので、実際のDR値などを保証するものではございません

デメリットとしては以下の通り。

デメリット

  • 歌い続けるとかなり中が暑くなる
  • 防音室に比べると防音性能は落ちる
  • 歌っている姿がヤバイ
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・・・「自由に歌えること」と比べると、大したことは無いですよね!

防音の理論

顔だけ防音室を作る前に、まずは防音の知識を身に付けることをオススメします。基礎的な防音の理論を知っている否かで、最終的に出来上がる顔だけ防音室の防音性能に大きな差が生まれます。

せっかく作ったのに、あまり効果がなかったら悲しいですよね・・・。そんな悲劇を迎えないためにも、基本的な防音の理論を学んでいきましょう。

1.防音を知る

防音のためには、「遮音」「吸音」の両方を実現する必要があります。

「遮音」とは、その名の通り「音を遮ること」を指します。音を完璧に遮音できる優秀な材質があったとして、その材質で箱を作れば、「外に漏らさない」ことは実現できます。しかし、遮音だけでは快適な音環境を実現することができません。音が内部で反響、共鳴してしまい、とても歌を歌える環境にはなりません。

そこで必要になるのが、「吸音」です。「吸音」とは、その名の通り「音を吸収すること」を指します。反射した音を吸収することで、音の反響や共鳴を抑えることができ、やっと快適に歌を歌うことができる環境が整います。

つまり、遮音した音を、吸音してはじめて、防音は完成するのです。

防音=遮音+吸音

これは、防音の最も基礎となる考え方なので押さえておきておきましょう。

2.遮音を知る

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遮音の概念を、簡単に掴んでいきます。

遮音は、材料に入射したエネルギーに対し、どれだけのエネルギーが透過するかで評価します。

つまり、透過率が低いほど、遮音性能が高いということになります。

また、似たような概念として、遮音性能を評価する指標に透過損失という指標があります。これは、入射した音の音圧レベルと、材料から出ていく音の音圧レベルの差を評価する指標で、透過損失が高いほど、遮音性能が高いことになります。

透過損失は、以下の式で表されます(垂直入射を仮定した場合)。

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つまり、材料が重ければ重いほど、透過損失は大きくなる、すなわち遮音性能が高くなります。

ですので、遮音する材料を選ぶ際は、極力重い材料を選ぶ必要があります。

ただ、遮音には意外な落とし穴があります

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実際に、遮音材を選ぶとなると、なかなか良い遮音材が見つからないことがあります。そんなとき、つい「そうだ!この材料を二重に重ねれば良いじゃん!」と考えてしまいがちです。

しかし、実は単に材料を二重に重ねても、遮音性能は大きく上がりません。むしろ、コインシデンス効果という効果が悪い方向に働き、特定の周波数での透過損失が大きく下がることもあります。

それよりも、上記図の右側のように、それぞれの材料を離して配置し、多孔質材(※後述)などの中間層を持たせた方が、大きく遮音性能が上がります。

3.吸音を知る

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吸音は、入射したエネルギーが、どれだけ熱エネルギーや透過エネルギーに転換されたかで評価します。その材料が、入射したエネルギーをどれだけ熱エネルギーに変換するか、というのが大事な観点となります。

吸音効果の高い材料の構造には、多孔質型吸音というものがあり、その中でも以下のように分類することができます。

連続気泡型:グラスウール、ロックウール、スポンジ
独立気泡型:発泡スチロール

簡単にいうと、材料内の気泡が、独立しているか、連続してつながっているか、で分けることができます。

実は、同じ多孔質の材料であっても、連続気泡型の材料の方が、吸音においては優れています

段ボールや発泡スチロールなど、「なんとなく吸音しそう?」と思った材料でも、思ったように効果を発揮しないこともあります。

吸音材を選択するときは、連続気泡型の材料を選ぶようにしましょう。

5.特殊な吸音

小学校の音楽室の壁に、小さな穴がたくさん空いていた覚えはありませんか?

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あの構造には、実は吸音の効果があります。詳しい理論は紹介しませんが、穴と後ろの空間がヘルムホルツ共鳴器として働くことで、特定周波数において音エネルギーが効率的に熱エネルギーに変換されます。

この吸音効果を狙って、有効ボードを材料として選択するのも良いでしょう。実際は、穴の大きさや密度、後ろの空間の厚みなどにより、吸音効果の高くなる周波数帯域が異なってきます。

ただ、実際に安価で購入できる有孔ボードの規格がそこまで多くないこともあり、狙った周波数の吸音は難しいかもしれません。ホームセンターに売っているような有孔ボードであれば、大体背後2~3cmの空間を持たせてあげることで、500Hz~1000Hzあたりの歌声においてエネルギーの強い周波数帯域を吸音することができると考えられます。

6.その他、押さえておくべきこと

また、防音について非常に大事なことは、空間を密閉することです。音は、少しでも隙間があると、そこから漏れていきます。顔だけ防音室の1番の問題点は、顔を入れるスペースが必要となるため、空間を密閉できないことです。これは本来、防音を考える上では致命的です。空間を完全に密閉できる防音室と比較すると、どうしても防音性能は落ちてしまいます。

その致命的な構造の欠陥を補完するためにも、しっかりと防音の基本的な理論に基づいて設計する必要があるのです。

作り方

さあ、基礎的な防音の知識を確認したところで、いよいよ顔だけ防音室の設計について触れていきます。

上記の知識を押さえた上で、価格や加工のしやすさ、入手しやすさなどを考慮して、構成を設計していきます。今回の顔だけ防音室では、以下のような構成の板を作りボックスを作ります。

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①MDF材:安価で、かつ、密度が高い木材です。加工もかなりしやすく、質にもムラのない、DIYの味方です。ホームセンターにも売っています。

②遮音シート:遮音のためのシートです。かなり重量がありますが、ハサミやカッターでカットもできるため、加工しやすいです。ホームセンターにも売っています。

③グラスウール:連続気泡をもつ多孔質材料で、吸音効果があります。手でちぎったり、ハサミでカットしたりできるので、加工しやすいです。ホームセンターにも売っています。

④有孔ボード:穴の開いた板です。ある程度音を遮音しつつも、穴による吸音効果もあります。割れやすかったりして若干加工しづらいですが、ホームセンターにも売っています。

⑤吸音スポンジ:箱内で反射する音を吸音のためのスポンジです。大きなホームセンターには売っています。

③のグラスウールの層を確保するために、間に角材を挟み、板を作ります。

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こうして、6つの面を覆う板を作ります。⑤の吸音スポンジは、ボックスを組み上げてから貼ることをオススメします。

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また、中にマイクを設置する場合は、底面の板(黄色)の真ん中に、ギリギリマイクケーブルが通るサイズの穴を開けておく必要があります。

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また、図の水色の部分は、顔を入れる部分なので、顔が入れられるギリギリのサイズを設計しましょう。

また、僕の場合は、セッティングのしやすさや、換気性能を考えて、手前の一面を、開閉できるような設計にしています。

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ただ、その分密閉性が失われてしまうので、圧着できるように間にスポンジを噛ませ、パッチン錠で圧着する仕組みをとっています。

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また、顔を入れる部分も、極力音漏れしないように、4分割した遮音スポンジ+吸音スポンジを固定しています。下から見ると、以下のような感じです(点線の部分はカット)。スポンジを木材に固定するのは難しいのですが、僕の場合は細いレザー 生地にネジを刺すことで、スポンジを木材に固定しています。

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こうして、ボックスを組み上げたら、最後は顔の位置に箱が来るように、このボックスを浮かせる必要があります。

箱を組み上げたらびっくりすると思いますが、箱はかなり重いです。これを浮かせるのは至難の技ですが、僕の場合は、ツーバイフォー材を2本、「ウォリストを使って、床と天井に突っ張って設置しています。賃貸でも木材の柱を設置できる、DIYでは非常に役に立つアイテムです。

そして、巨大なL字アングルで、顔だけ防音室を固定しています。正面からみた図、横からみた図を記載します。

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ここで、注意点があります。顔だけ防音室はかなり重量があり、これを木材で固定しているため、支点となる天井や床には大きな負荷がかかります。

天井には柱が通っている部分、通っていない部分があり、柱が通っていないところはかなり強度が低く、顔だけ防音室を支えきれず天井が壊れてしまう可能性もあります。

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必ず天井の強度を確認して、設置してください。

また、実際に顔だけ防音室を裏から見た写真を記載します。

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現状、震度3ほどの地震を数回経験していますが、特に落下したりしたことはありません。ただ、かなりの重量の物を空中に設置することになるので、あくまで設置は自己責任でお願いいたします。

まとめ

このようにして、顔だけ防音室を作成することができます。

防音室を自作するのに比較してサイズが小さい分、労力もかからないですし、なんと言っても賃貸住宅でも設置可能で省スペースです。

また、僕の場合は材料費が2万円強ほど、制作期間は1日でした。

顔だけ防音室を作ってから、圧倒的に歌を歌う機会やレコーディングの機会も増えましたし、上達にもつながりました。
もし、顔だけ防音室に興味がございましたら、是非作ってみてはいかがでしょうか。
皆さんの音楽ライフがより楽しいものになれば幸いです!

詳細な設計図

顔だけ防音室の詳細な設計図と組み立て説明書を無料で公開いたします!

設計図の通りに材料を準備し、説明書に従えば、顔だけ防音室が作れるようになっております。

より気密性を高めるために、ただ面を組み合わせるだけではなく、少し入れ子で木材を設計したりと、より防音性能を追求した構造となっています(作るのはそんなに難しくありません)。

ホームセンターなど、材料を揃える際に、意外と思った厚みの板や角材が無かったりすることが多いので、エクセルで材料の厚みやサイズを入力してもらえれば、各辺の長さが計算できるようにしています。

利用される方は、エクセルファイルをダウンロードしてご利用ください!