本記事では、歌声が生成されるプロセスを追いながら、歌声の生成される基本的な仕組みを学んでいきます。
声の生成の仕組みを知ることで、より根拠のあるボイストレーニングが可能になります。
歌を歌う時、まず、息を吸います。そして、肺から押し出された空気が、声帯にぶつかります。
声帯は、送られた空気によって、閉じたり、開いたりを繰り返します。こうして、声帯で、声の元となる声帯音源波が生成されます。
この声帯音源波は、実はブチブチとしたブザーのような音で、私たちのイメージする歌声とは程遠い音です。
声帯から発せられたこの声帯音源波は、喉を通過し、口の中や鼻の中に到達し、口や鼻から放射されます。この、声帯から口や鼻までの声の通り道を声道といいます。
声道を通る音源波は、声道において歯や舌やほっぺたなどにぶつかり反射を繰り返します。それにより、声帯音源波の音色が変化し、そして唇から音波が放射されます。
こうして、初めて私たちのイメージする歌声になります。
つまり、歌声は、以下のようなプロセスで生成されます。
これらのプロセス経て、歌声は生成されます。
このように、発声のプロセスを、声帯で発生する「音源」と、声道によって付与される特性「フィルタ」に分離して考える考え方を「音源フィルタ理論」「ソースフィルタ理論」と呼びます。
歌声生成のプロセスの概要を掴んだところで、今度は声帯音源に声道の共鳴特性が付与されるプロセスについて、より詳しく解説します。
声帯音源波の周波数特徴をみてみましょう。声帯音源波は、下図のような周波数特性を持っています(周波数特性とは?という方は、こちらの記事を参照ください)。
声帯音源波、特定の周波数でピークを持っており、この1つ目のピークを基本周波数(F0)と呼びます。基本周波数(F0)は、いわゆる「ピッチ」や「声の音高」に対応し、F0が高いほど、高い声になります。
そして、声帯音源波は、その2倍の周波数、3倍の周波数、4倍の周波数・・・というような、基本周波数の整数倍の周波数でも強いパワーを持ちます。これを、基本周波数の倍音と呼びます。
声帯音源波の倍音成分のパワーは、高次(図の右の方)になるほど、減衰していきます。
続いて、声道のもつ音響特性をみてみましょう。
声帯音源波は、声道を通ることで、その周波数特性が変化します。つまり、声道がフィルタとして働きます。
声道の周波数応答(声道に、フラットな周波数特性の音源を入力したときに、どのような特性が付与されて出力されるかを表す応答、つまり、声道の音響的な特徴)は、以下のようになります。
この周波数応答は、声道の形状に大きく影響を受けるので、舌の位置や顎の位置、喉の開き方などによって、その特性も大きく変化します。
そして、この声道の周波数応答のピークをフォルマント周波数といいます。周波数の低いピークから、第一フォルマント(F1)、第二フォルマント(F2)…と呼びます。
先ほどの声の生成プロセスでみたように、声帯音源波が声道を通過することで、声帯音源波に声道の共鳴特性が付与されます。つまり、最終的に口から放射される声は、以下のような特性を持った音声になります。
このように、音声の生成のプロセスを理解すると、実際の音声の周波数特性をみた時に、どの特性が何の影響を受けているのか、理解することができるようになります。
Voickの詳細分析機能では、歌声の周波数特性を見ることも可能です(※)。
実際に、声を高くすると、声帯音源波の基本周波数が上昇します。また、口の開き方を変えると、フォルマントが変化します。
どのような発声をすると、どのような音響的特徴を持った声になるのか理解できるようになると、声への知見が深まり、より効果的なボイストレーングが可能になります。
是非、いろいろな発声を試し、声を研究してみましょう。
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