声帯の生理学

                                      
                      

本記事では、声帯の生理学的な構造について学びます。

声帯の生理学的な側面を学ぶことで、発声のイメージが掴みやすくなります。

声帯の構造

声帯は、喉頭に存在する発声のための組織です。

以下は、喉頭の断面図です。

肺から空気が送られ、声帯が振動することで、声が発生します。

声帯の上部には、仮声帯という器官が存在します。仮声帯の主な機能は、気管への誤嚥を防ぐことだと考えられていますが、歌唱においても、仮声帯の振動が影響を与えることが知られています。

また、声帯は、均一な構造ではなく層構造になっており、大雑把に捉えると、声帯内側に筋肉(声帯筋)があり、その外側を粘膜が覆っているような構造になっています。

しばしば、この声帯の粘膜部分をカバーと呼び、声帯筋部分をボディと呼びます。

ボディとカバーは、お互いに疎に繋がっており、ある程度独立して動くと考えられています。

発声時は、カバーの弾性により、声帯の下部から接触が開始し、全体が接触し、下部から離れていくような声帯振動パターンが見られます。

声帯筋が収縮すると、声帯は短く、分厚くなり、その分カバーが弛緩します。カバーが弛緩すると、この声帯振動パターンが顕著にみられ、この振動パターンが、強い倍音成分を持った、地声らしい音色につながっていると考えられます。

一方、裏声では輪状甲状筋(後述)が収縮し、声帯が薄く伸びると、カバーも硬度が増し、声帯は薄く接触するように振動します。

喉頭の構造

声帯は、喉頭の内部に位置します。喉頭は、いわゆる喉仏のあたりの器官を指し、複数の軟骨から構成されています。

それでは、喉頭を3つの角度からみてみましょう。

喉頭を正面からみた図
喉頭を側面からみた図
喉頭を後ろからみた図

発声に大きく関与する軟骨は、以下の4つの軟骨です。

この4つの軟骨を覚えておくと、声帯の基本的な動きを理解できるようになります。

ちなみに、声帯は喉頭の披裂軟骨と甲状軟骨を結ぶ組織であり、この喉頭の筋肉が複雑に伸縮し、軟骨が動作することで、声帯をコントロールすることができます。

喉頭の筋肉

続いて、喉頭の筋肉についてみていきます。喉頭には様々な筋肉がありますが、先ほど学んだ喉頭を構成する軟骨同士を結ぶ筋肉について学びます。

喉頭において、声帯振動に影響を与えうる筋肉について、代表的な5つの筋肉をみていきます。

輪状甲状筋(CT)

甲状軟骨と輪状軟骨を結ぶ筋肉。この筋肉が収縮することで、甲状軟骨が前傾し、声帯が薄く伸びる。声は高くなる。声帯のボディとカバーが薄く、硬くなり、正弦波に近い裏声らしい声帯振動パターンになる。

外側輪状披裂筋(LCA)

甲状軟骨と輪状軟骨を結ぶ筋肉。この筋肉が収縮することで披裂軟骨が内側に回転し、声帯が閉じる。声門(声帯の隙間)が閉じられ、声帯の閉鎖が強くなる。

甲状披裂筋(TA,声帯筋)

甲状軟骨と披裂軟骨を結ぶ筋肉。この筋肉が収縮することで声帯が短く、分厚くなる。また、ボディが収縮するため、ボディは硬くなるが、その分カバーは弛緩する。それにより、地声らしい声帯振動パターンとなる。

披裂筋(IA)

披裂軟骨同士を結ぶ筋肉。この筋肉が収縮することで、互いの披裂軟骨が近づき、声帯が閉じる。

後輪状披裂筋(PCA)

披裂軟骨と輪状甲状筋を結ぶ筋肉。筋肉が収縮することで、披裂軟骨が外転し、声帯が離れる。また、声帯が薄く、長くなる。

声帯については、古くより多くの研究が行われていますが、歌唱における声帯の動きを司る組織は非常に複雑で、その全てが解明されているわけではありません。しかし、大まかな構造を知っておくだけでも、発声のイメージが具体的になることがあります。

喉頭の基本的な生理学を押さえておきましょう!

本記事のポイント

  • 声帯は、ボディーとカバーに分けて考えることができる
  • 発声において声帯は、声帯下方から声上方に向かって接触し、下方から離れていくような振動パターンをもつ
  • 喉頭は、主に喉頭蓋軟骨、甲状軟骨、披裂軟骨、輪状軟骨で構成される
  • 軟骨同士を結ぶ筋肉が伸縮することで、声帯をコントロールすることができる

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