執筆:いっすい(歌声研究家。大学で歌唱音声研究を専攻し、ミックスボイスの研究で修士号を取得)

声帯の生理学

本記事では、声帯の生理学的な構造について学びます。

声帯の生理学的な側面を学ぶことで、発声のイメージが掴みやすくなります。

声帯の構造

声帯は、喉頭に存在する発声のための組織です。

以下は、喉頭の断面図です。

喉頭の断面図。下から空気(Air Flow)が上がる通り道に、声帯とその上の仮声帯が左右から張り出している。

肺から空気が送られ、声帯が振動することで、声が発生します。

声帯の上部には、仮声帯という器官が存在します。仮声帯の主な機能は、気管への誤嚥を防ぐことだと考えられていますが、歌唱においても、仮声帯の振動が影響を与えることが知られています。

また、声帯は、均一な構造ではなく層構造になっており、大雑把に捉えると、声帯内側に筋肉(声帯筋)があり、その外側を粘膜が覆っているような構造になっています。

声帯の左右の断面図。内側の筋肉の部分をボディ、その表面を覆う粘膜の層をカバーとして示している。

しばしば、この声帯の粘膜部分をカバーと呼び、声帯筋部分をボディと呼びます。

ボディとカバーは、お互いに疎に繋がっており、ある程度独立して動くと考えられています。

発声時は、カバーの弾性により、声帯の下部から接触が開始し、全体が接触し、下部から離れていくような声帯振動パターンが見られます。

声帯の断面を8コマ並べた図。振動の1周期で、下部から接触が始まって全体が接触し、下部から離れていく様子を示している。

声帯筋が収縮すると、声帯は短く、分厚くなり、その分カバーが弛緩します。カバーが弛緩すると、この声帯振動パターンが顕著にみられ、この振動パターンが、強い倍音成分を持った、地声らしい音色につながっていると考えられます。

一方、裏声では輪状甲状筋(後述)が収縮し、声帯が薄く伸びると、カバーも硬度が増し、声帯は薄く接触するように振動します。

喉頭の構造

声帯は、喉頭の内部に位置します。喉頭は、いわゆる喉仏のあたりの器官を指し、複数の軟骨から構成されています。

頭と首の断面の図。喉の奥、喉仏のあたりにある喉頭の位置を点線の丸で囲んでいる。

それでは、喉頭を3つの角度からみてみましょう。

喉頭を正面から見た3Dの図。上に大きな甲状軟骨、その下に輪状軟骨があり、2つの間を筋肉がつないでいる。
喉頭を正面からみた図
喉頭を横から見た3Dの図。板のような甲状軟骨の後ろに輪状軟骨と披裂軟骨があり、軟骨の間を筋肉が結んでいる。
喉頭を側面からみた図
喉頭を後ろから見た3Dの図。輪状軟骨の上に左右の披裂軟骨が乗り、その周りを筋肉が結んでいる。
喉頭を後ろからみた図

発声に大きく関与する軟骨は、以下の4つの軟骨です。

喉頭を3つの向きから描いた図。喉頭蓋軟骨・甲状軟骨・披裂軟骨・輪状軟骨の4つを色分けし、名前を付けている。

この4つの軟骨を覚えておくと、声帯の基本的な動きを理解できるようになります。

ちなみに、声帯は喉頭の披裂軟骨と甲状軟骨を結ぶ組織であり、この喉頭の筋肉が複雑に伸縮し、軟骨が動作することで、声帯をコントロールすることができます。

喉頭を横から見た図。甲状軟骨の内側を前後にのびる声帯を、赤い線で示している。

喉頭の筋肉

続いて、喉頭の筋肉についてみていきます。喉頭には様々な筋肉がありますが、先ほど学んだ喉頭を構成する軟骨同士を結ぶ筋肉について学びます。

喉頭において、声帯振動に影響を与えうる筋肉について、代表的な5つの筋肉をみていきます。

喉頭を横から見た3Dの図。甲状軟骨と輪状軟骨の前側をつなぐ輪状甲状筋(CT)を光らせて示している。
輪状甲状筋(CT)

甲状軟骨と輪状軟骨を結ぶ筋肉。この筋肉が収縮することで、甲状軟骨が前傾し、声帯が薄く伸びる。声は高くなる。声帯のボディとカバーが薄く、硬くなり、正弦波に近い裏声らしい声帯振動パターンになる。

喉頭を後ろから見た3Dの図。左右の外側輪状披裂筋(LCA)を光らせて示している。
外側輪状披裂筋(LCA)

甲状軟骨と輪状軟骨を結ぶ筋肉。この筋肉が収縮することで披裂軟骨が内側に回転し、声帯が閉じる。声門(声帯の隙間)が閉じられ、声帯の閉鎖が強くなる。

喉頭を横から見た3Dの図。甲状軟骨の内側を前後に走る甲状披裂筋(TA、声帯筋)を光らせて示している。
甲状披裂筋(TA,声帯筋)

甲状軟骨と披裂軟骨を結ぶ筋肉。この筋肉が収縮することで声帯が短く、分厚くなる。また、ボディが収縮するため、ボディは硬くなるが、その分カバーは弛緩する。それにより、地声らしい声帯振動パターンとなる。

喉頭を後ろから見た線画。左右の披裂軟骨の間をつなぐ披裂筋(IA)を赤く塗って示している。
披裂筋(IA)

披裂軟骨同士を結ぶ筋肉。この筋肉が収縮することで、互いの披裂軟骨が近づき、声帯が閉じる。

喉頭を後ろから見た3Dの図。背面の左右に並ぶ後輪状披裂筋(PCA)を光らせて示している。
後輪状披裂筋(PCA)

披裂軟骨と輪状甲状筋を結ぶ筋肉。筋肉が収縮することで、披裂軟骨が外転し、声帯が離れる。また、声帯が薄く、長くなる。

声帯については、古くより多くの研究が行われていますが、歌唱における声帯の動きを司る組織は非常に複雑で、その全てが解明されているわけではありません。しかし、大まかな構造を知っておくだけでも、発声のイメージが具体的になることがあります。

喉頭の基本的な生理学を押さえておきましょう!

本記事のポイント

  • 声帯は、ボディーとカバーに分けて考えることができる
  • 発声において声帯は、声帯下方から声上方に向かって接触し、下方から離れていくような振動パターンをもつ
  • 喉頭は、主に喉頭蓋軟骨、甲状軟骨、披裂軟骨、輪状軟骨で構成される
  • 軟骨同士を結ぶ筋肉が伸縮することで、声帯をコントロールすることができる

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歌を歌うにあたって、様々な音域をスムーズに歌えるようになることはとても重要です。声区のコントロールができるようになると、幅広い音域で歌を自由に歌うことができるようになります。本記事では、ミックスボイス、ヘッドボイス、チェストボイスといった基本的な声区について、その特徴を生理的側面、物理的側面から説明します。

声区の基礎歌声の理論

声帯の生理学

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歌声の理論発声の生理学

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